目次
スタッフ/キャスト
- 監督-クリストファー・ノーラン
- 脚本-クリストファー・ノーラン
- キャスト
フィン・ホワイトヘッド、アナイリン・バーナード、ハリー・スタイルズ、トム・ハーディ、ジャック・ロウデン、マーク・ライランス、トム・グリン=カーニー、キリアン・マーフィ、ケネス・ブラナー他
概要/あらすじ
クリストファー・ノーランがフランスのダンケルクからの英仏撤退作戦を描く。
英仏連合軍40万の兵士はフランス北端ダンケルクに追い詰められていた。英国陸軍兵士のトミーは所属していた分隊を失い、一人ダンケルクの砂浜にたどり着く。そこには撤退作戦で船を待つ多くの兵士が列をなしていた。一方イギリスでは撤退作戦に民間船を動員することなる。民間船の船長ドーソンは息子らを乗せ、兵士救出ためダンケルクを目指す。ファリアらが繰るイギリス空軍スピットファイアも数的不利のなか出撃する。陸海空それぞれの視点でそれぞれの時間で作戦を描く。
どんな人におすすめなの
派手ではないが考えさせられるヒューマンドラマ、群像劇が好きな人。
見どころ
※以下内容にふれることあり、ネタバレ注意です
陸海空で繰り広げられたダンケルクの作戦を各々の視点で描く。陸での一週間、海での一日、空での一時間と作戦に関わったそれぞれの時間尺度で描きつつ、それらが交錯しながら1点に収束していく群像劇は、わかりづらい点はあるものの、時間を巧みに演出しサスペンスのような描き方がクリストファー・ノーランらしく面白い。
この映画でははっきりとした形で敵兵は描かれないし、「プライベートライアン」などのようなリアルな死傷シーンもない。それでいてそれぞれの主観にこだわった映像は、独特の臨場感にあふれていて、それは諦めに近い絶望感や、生き残るために人は簡単に利己的なるところにもあらわれている。セリフの少なさや、時計の秒針の音や早鐘を打つ鼓動を思わせるリズムをベースに動揺や緊迫緊張を感じさせるハンス・ジマーのBGMが、さらに効果的に臨場感を盛り上げる。寄せては返す波のような死の運命を、運よく躱したものだけが生き残る。
無事にイギリスにもどった兵士たちは疲れをかかえ、不安にあふれている。ラストでトミーがチャーチルの演説の記事を読み上げる。チャーチルはダンケルクに翻弄された個々人の物語を、イギリス人の忍耐、団結力に見事に昇華する。しかし同時に、実際に戦場には行かない人間の言葉として虚しさも感じてしまう。イギリス本国の人と感じ方が違うのかもしれない。ダンケルク・スピリットを日本人の自分が完全に理解するのは難しいとも感じた。
戦争の惨さを強調するでもなく、作戦の成功をことさら賛辞するわけでもなく、ただ臨場感にこだわり主観的映像で描く。時間を使った複雑な脚本、進行に対して、この物語にカタルシスはない。それでも、撤退する兵士たち、それを助ける民間の船長や空軍パイロット、みな目の前にある状況で自らに最善とおもわれる行動を必死にとる姿は、ヒューマニズム的善悪は抜きに、ある意味美しいと感じた。